前回までの想い出ハートビート
本日『SEX山口のGWIG GWIG RADIO』で想い出ハートビート:episode4がドロップされます。今回は夏休みらしくセミの染み入るエピソードになっております。お楽しみに!
前回までの想い出ハートビートは以下になります!
想い出ハートビート:episode3
この冬、つらい恋を経験した僕はひとり北海道へスキーにやってきた。
いまだ雪が吹きすさぶ、北海道のゲレンデの厳しさに自分の心を重ねにきたんだ。春スキーを楽しもうと浮足立ったカップルたちに紛れて僕は1人リフトに乗った。
ゲレンデはいいね・・・ リリンが生み出した文化の極みだよ・・・
今僕は自分で言ってることがよくわからないまでも、まっしろなゲレンデにつらい恋の記憶も漂白されていくような実感を味わった。
ゲレンデの一番上から思い切って急降下!ああ!ものすごいスピード!肌を切り裂くような寒さ!自分の呼吸の熱さ!
瞬間、目の前を横切る何かを不意を突かれた僕は、バランスを失い奈落へと転落していってしまった。気絶から目を覚ますと綺麗な女性が僕を覗き込んでいた
「ごめんなさい・・・わたしが急にとびだしたものですから・・・・お怪我はないですか?」
「あっああ!全然平気っつ・・・いたたた・・・ハハっなさけないな!スキーには自信があったんだけどね、ちょっと足をくじいちゃったかな?僕の名前は山口セックス。気軽に山セックって呼んでよ、君の名前は?」僕はぺロッと舌をだしてせいいっぱいおどけてみせた。
「うふふ、かわった名前ね!私の名前はゲレンデすべ子。この近くに住んでいるの。」
「変わった名前は君も同じさ!」僕らは白い世界で笑いあった。
中略して夜の話になるけど、彼女は僕を旅館に送り届けつつ、怪我をさせてしまったのでと旅館に申し入れ、そのまま僕の部屋に押し入る形となった。
多少の社交辞令を交わしながら、僕らの視線は男女の熱を帯び、自然に互いを求めた。
展開早くも僕は彼女というゲレンデをボーゲンしていた。
実際僕は彼女に夢中になっていた。しかしそれはつらい失恋の記憶を振りほどこうと、刹那的な快楽に没頭していただけかもしれない。
そして、そのことに彼女は気づいていたのかもしれない。
翌朝彼女はおらず、旅館の木のちゃぶ台にマジックでBYE-BYEと書かれていて、まんじゅうは食い散らかされていた。
チェックアウト、ちゃぶ台分のの追加請求書を方眉をあげて一瞥し、やれやれとひとりごち、VISAカードで支払いをすませ、僕は東京に帰った。
1週間後の2月14日、僕のメンションに届いた宅急便、差出人はすべ子、住所はゲレンデとなっている。
「バレンタインデーか!」僕は嬉しく思い、いそいで宅急便を開けた。
かわいい包装の箱の中にはたくさんの油揚げと1枚の葉っぱ。
葉っぱには
「ヤマセックくん、この間はご免ね、素敵だったわ。」との文字と、人間離れしたキスマーク。遠く北海道のゲレンデからコーンとキツネの鳴き声、心に温かい春風が吹いた気がして僕を和ませた。
act:SEX山口/ZEN-LA-ROCK