ゼロ年代ちゅってから

ゼロ年代とはなんだったか

VINCENT RADIOというネットラジオの企画で、ゼロ年代を代表すると感じる曲を1曲あげ、コメントを欲しいと依頼を受けましたが、時間が無くコメントは間に合いませんでした。放送も聴けませんでしたが、この依頼をきっかけに、信号待ちや再起動中に「ゼロ年代か、、、その特徴はなんだったかなー、、、、」と思った事を今年の最後のメモとして記しておこうと思います。数年たって、全然違ったサムイね!というのも一興ということで・・・・。

何事も並列化された感のあった90年代からゼロ年代へ移行してもっとも変わったのは音楽の日常聴取スタイル。ラジカセ、ミニコンポ、ウォークマンで聴いていた音楽がPC、メディアプレイヤーに移行。CDRも気軽に焼き、2001年にもっとも使われていたファイル共有ソフトWINMXで様々な音源をDLしました。現在、MP3単位で曲を管理するのはなんの抵抗もありませんが、当時はフォルダ分け等が非常にめんどくさかった思い出があります。当時のDJ仲間に「レコードとかCDとかにくらべるとMP3って小さい(PCの画面上で)じゃん。だからちゃんと集めようと思えないよね・・・」と言われたこともありました。が、今となってはそのMP3管理もなんの不便さも感じず行われ、90年代に並列化されたものがデスクトップ状のアイコンとして、更なる印象の並列化が行われ、タグ付け、階層分け、ビットレート順と新たな印象を音楽にもたらしたように思います。MP3で"1曲"単位と、シャワシャワしたPCの音質に違和感を感じなくなったのもゼロ年代の出来事かもしれません。

この聴取状況も"90年からの更なる並列化"という点で意味を持つと思います。この更なる並列を通して"圧縮"と場合によっては"非可逆圧縮"があったのがゼロ年代だと思います。

◇ヒットチャートが意味を成さない細分化されたシーン
よく聞いた言葉だと思います。
細分化された場所での言葉の進化、音楽の進化はそのシーンの中での振る舞い、「前回こうだったけどこうなった」等はシーンの外にはわかりにくい流れになるでしょう。しかしその内輪の人には分かる流れが出来ていて、その前提を既に知っている人たちの前で表現が行われたたり、それについての専門用語が話されたり、専門用語が表す音が鳴っていたりしています。
この"専門的な前提を既に知っている"上で鳴らされる音には先の前提が含まれて圧縮されていると考えていいでしょう。単に鳴らされた音に別の印象が含まれています。ゆえに以前よりも多くの情報がそこには含まれているわけです。

◇マニアの会話は意味が分からない
仲のいい友達との会話を他の人が聞いたときに意味不明だろうと思う
という経験はありませんか?これは話が通づるだろうという部分をバッサリ省略し、言葉は少なく、情報は多く交換している状態です。先日聞いたとあるエディットミュージックマニア達の会話もほぼ意味不明でしたが
「見付かったんだよあのマスターミックスの」
「5番?」
「いや黄色」
「あー」
察するところ言葉以上の情報が飛び交っています。
この感覚が細分化されたシーンそれぞれで深化していたんじゃないでしょうか。
同じ出音より多くの情報量 = 圧縮
そしてこの圧縮時にハエが混じってハエ人間が生まれるような非可逆圧縮も当然あります。
非可逆圧縮の理由は色々あると思いますが、主に出典元の重要度が極端に下がったことにより、クロス行動の敷居も下がった結果、複数のルーツをもつ圧縮が非可逆になるという感じでしょうか。
サンプリングの為にレコードやCDから機材に落とし込む作業が、WAVやMP3をPCで編集という非常に軽いタッチでサンプリングを執り行えるという環境が新たな圧縮を生んだように思います。

ゼロ年代は圧縮された記号と、その記号を生成する為の細分化された先の閉じたサークル。生まれた記号の運用バリエーション。
これが自分の印象です。

圧縮だなんだと分かりにくいかもしれませんが、音楽とは別の業界でこの事を分かりやすく説明することが出来ます。

ゼロ年代秋葉原

アキバ系、萌え、同人、、、、、
この世界には圧縮された記号に満ちていて、その記号の組み合わせ自体が表現として成り立ち、ストーリーという大枠の中に研ぎ澄まされた圧縮記号を配置し、情報量と体感スピードをエスカレートさせていく事を成功させています。

いわゆる属性(萌えキャラに備わっている固有の性質・特徴。萌え属性)という考え方はこの圧縮記号を良く表しています。
属性の1つである"ロリ巨乳"で考えてみましょう。
まず、"ロリ"はそもそものロリータ・コンプレックスの印象は薄く、"幼い"という程度のカワイイは正義といけない感じを表す属性で、巨乳に関して、大人、エロい、馬鹿、大らか、母性等が含まれる属性。2つ相反する属性がセットになった時にどのような印象になるか・・・
☆まだ幼いのに体ばっかり発育しちゃってつい目が胸にいっちゃうけど、みちゃいけない気がしてドキドキする。しかもまだ幼いから、男の子が自分のことをどうゆう目で見ているかとかに無頓着で大胆な行動や格好をするからハラハラするよなー。急に無邪気に抱きついてきて胸があたっても全然気にしてないみたいだし・・・・
という印象(この逆の設定も考えられます、すなわち、大人なのに子供っぽくみえるパターンでコチラのほうが現実的・・・)を"ロリ巨乳"の字面4文字で感じる事ができるのはその印象のバリエーションが"ロリ巨乳"に圧縮されているからな訳です。
同人等2次創作物に関しては、前述の属性表現とは別に、出典元から派生しつつ登場人物のキャラ設定立場を利用した原作にはないエロシチュエーションの提案で非可逆圧縮を見せています。

このような情報圧縮と圧縮記号の組み合わせが音楽の世界でも行われていたのがゼロ年代だと思います。
ハードコアテクノやガバをポップな同人音楽にアレンジの一部として盛り込んでいるイオシス

ブレイクコアビートと流麗なコード進行、チョップされたオリエンタルなボイスを同居させているDEDEMOUSEなんかは

まさに"ロリ巨乳"的な圧縮記号の組み合わせを行っているでしょう。
イオシスやDEDEMOUSEは広く支持を集めるアーティストですが、その音楽に含まれる圧縮記号は、それぞれの閉じたサークル内で熟成された圧縮記号の筈でした。しかし、すぐれた圧縮記号はそのシーンから飛び出し、他の記号とすぐ隣同士になる可能性がある・・・・のはiPod shuffleのおかげかもしれません。

先の属性という概念は既に一般的にも普及していて、草食性男子、森ガールとどんどんキーワードが抽出され記号化してます。

音楽でいうならば"コズミック"や"アーメン"という属性になんらかの印象をもつでしょう。ギターやシンセの音色1つ、音のこもり方1つで何らかの印象を与え、それは既に圧縮記号化されているでしょう。

ゼロ年代、もっとも極端な圧縮は"着うた"じゃないでしょうか。

◇じゃこの先は?
これまで様々なシーンで培われた圧縮記号がシーンを出て反応しあうという希望的観測をもっています。
また、圧縮記号をより肉体的に扱う新世代があたらしい言語を教えてくれるかもしれません。

昔と比べ色々な事が簡単にできるようになった現代では、「ギター1本のみで自然体のうた」さえ、これを今の時代に・・・という付加情報がついてしまします。

なので新しいパッションを感じるには未だ見ぬテクノロジーの先っぽで壁にぶつかるアーティストや、己の肉体を鍛錬し壁にぶつかるアーティスト以外、パッションを感じる事は出来ないように思います。

ゼロ年代を象徴し、かつこの先の未来を感じさせてくれた何曲かをここにあげてこのグダグダ思考も終えようと思います。



まとめ:ゼロ年代は気軽に音楽を聴き、簡単に音楽を編集できる時代と、シーンの細分化により、圧縮記号生成を速やかにし、音楽そのものの情報スピード感を倍加させた時代だった。







※メモ
記号を圧縮することの利点は時間の節約です。圧縮したぶん別の情報を入れる事が可能になる。極端な話、3分間の曲の中に、60年代だったらアルバム1枚かけてやった表現を詰め込み、スピード感を出す事が可能。
※メモ
ニコニコ動画のタグも閉じたシーンの中での振舞いとして面白かった。本来緩やかなジャンル分けの為にあるタグは最大公約数的になるべき所を、あえてそこにしか必要がないであろうニッチで的を得たタグをつけるという冗談。そこからそのタグに見合うものが生まれたりと、情報の圧縮サンプルとしても興味深かった。
※アイデアメモ
圧縮記号でガチガチに固まった音楽を解凍する音楽というのも面白いかもしれません。例えばあるオレンジレンジ(適当な圧縮記号に満ちた)の曲に含まれる色々な要素を原曲から抽出して大きく広げてみせるとか・・・。
※余談
今年のM-1での笑い飯の"鳥人"は面白かった。最初の鳥人の説明時、誰もがなんだその設定・・・と疑問に思った所を詳しく説明せず本編に入るあのスピード感。ついてくるのが当然という態度・・・・M-1はボケをどれだけ詰め込めるかがカギという分析をネットで見たことがあったけど、詰め込み以外で、まだ飲み込めないまま引っ張られる事で得るスピード感というのは特別感があった。
※追記
オカダダUSTには新しい未来が!
「オカダ事変!!聖夜に2200人超を沸かす8畳間のUstDJライブ!」
http://togetter.com/li/2219
トーフくんのまとめ
http://tofubeats.blog107.fc2.com/blog-entry-235.html