想い出ハートビートepisode1&2

想い出ハートビートはSEX山口のGWIGGWIGRADIO内の不定期シリーズコーナーで自分が脚本をやっているラジオドラマです。続きがあればまたよろしくお願いいたします!
T.R.E.A.M. presents『SEX山口のGWIG GWIG RADIO』

想い出ハートビート:episode1


僕の名前は山口セックス

行きつけのプールバーでは山セックと呼ばれている
今日は1人でボーラードの練習をしながらドライマティーニをなめていた
キューの先にチョークをこすりつけながら先程までのゲームをプレイバックしていた時に、彼女は話かけてきた

「ずっとゲームを見ていたけれど、とても繊細なプレイをなさるのね?」
「これはこれはレイディー、繊細かつ時には大胆に...それが僕のモットーなんだけど、ちょいとシケた所ばっかり見せちゃったかな!はじめまして。僕の名前は山口セックス。みんなには山セックって呼ばれてる、問題なければあなたの名前も教えて貰えるかい?」
「わたしの名前はミサコ、ローマ字でミサコと書くの」
挨拶かわりのカクテルチアーズ
彼女のサングラスの奥には泣きはらした目
それに気づきながらも僕は自信満々に沢山のジョークを連発してワケありの空気を無かったことにした
「それでね、僕はその時言ってやったんだ。それではまるでサメじゃないかってね!」

またしてもすべらないジョークでミサコの笑顔をGET
笑顔はだんだん真顔になって
ステージはプールバーからスウィートルームにムーヴした

しっかりとメイキングされていたシーツの海は肌に心地よく冷たく、僕らの熱さをさらに際立たせた
そして僕らはまるで魚のようにその海を自由に泳ぎ回った

僕らのゲームは自機の消滅で
ゲームオーバーを迎え
コンティニューを願うも
無慈悲な朝が来た

「ミサコ、次に会えるのはいつだろうね?」
「ありがとう山セックくんとても素敵だったわ、次に会える時はお返しのジョークを考えておくわ」

連絡先を聞くこともなく、僕らは別れた

数週間後、街で見かけたミサコはスーツ姿で、仕事の上司らしき男性を甲斐甲斐しい視線で見上げていた
きっとミサコは彼の事が好きなのだろうか

ミサコと目があったような気もしたがわからない
僕は何気なく2人の横を通りすぎた

その日の夜、薄いブルーさをまとってプールバーのドアを空ける
マスターからドライマティーニと一緒に折りたたんだメモを渡された
そこにはとびきりのジョークとローマ字の署名
吐き出したタバコの煙がミサコの顔を形作る

あの夜、僕のジョークは本当にウケていただろうか
そんなことを考えながら
僕はミサコへの淡い想いを封印した

僕の名前は山口セックス

今日も1人でボーラードの練習をしながらドライマティーニをなめている



act:SEX山口

想い出ハートビート:episode2

このコーナーは ZEN-LA-ROCKニューアルバムLA PHARAOH MAGIC収録曲、GREAT SUMMER VACATIONの提供でお送りします


「フフフ セッくん セっくん起きてってば」

彼女に揺り起こされた
ような気がした
彼女の声は次第にぴーーーーーひょろろろろ〜〜〜
とトンビの鳴き声にモーフィングしていった

心地よい波の音の中、僕は目を開けた
砂浜にパラソルとビーチベッド
僕はいつの間にかうたたねをしてしまっていたようだ

僕の名前は山口セックス 5年前に別れた彼女には セッくん と呼ばれていた

そう 今日は昔彼女と来たこのビーチに、なんとなく来てしまったんだった

彼女と別れたあと、ショックだったけれども がむしゃらに仕事をし、大きな契約も決めることが出来て、僕は昇進し、収入も増え、以前よりもいい車を乗っている
だけど どこかこころに大きな開いた穴がある気がしていた

僕はもう一度目を閉じて回想にふけった

「このビーチはね僕のビリヤード仲間に教えてもらった穴場なんだ 素晴らしい景色を二人じめできるだろ?」
「素敵ね セッくん」
「この入り江には時々イルカが来るんだって、そのイルカをロッ子とふたりで見たいなあって」
「セッくん!ほんとにイルカが来たわ!」

僕たちは入り江に立ち寄ったイルカと、太陽できらめく波模様の景色の神秘的さに息を呑んだ

「あーもう行っちゃった!カラアゲでも投げたらまた寄ってくるかな?」
「ヤップヤップ」
「え?今なんて言った?」
「湾ネーション 夏のバケーション 甘いセンセーション 未知シチュエー・・・」
「は?急に何言ってるんだい?」

「セッくん さっきのイルカは私よ とても素敵だったけれど 気まぐれですぐどっかに行ってしまうかも」

「なにを言ってるんだい?それよりさっき・・・」
「セッくん」

僕たちは太陽の中で素敵なキスをした

それからほどなく僕らはささいなことでケンカをし、別れてしまった

回想から現実に戻ると 一面は太陽にきらめく波模様 あのときと同じ美しい景色
違うのは 君だけがいない ということ

すると入り江にイルカがやってきた 
僕は少し自嘲気味に笑いながらイルカに話しかけた

君はロッ子なのかい?

すると僕の背後から


「そのカラアゲ私にくれるかしら?」

と声がした。



僕たちは太陽の中で素敵なキスをした。



act:SEX山口/ZEN-LA-ROCK